K-POP meets Moombahton(ムーンバートン) 〜EDMの次はこれが熱い!〜
これまで3回にわたってK-POP meets EDMというタイトルで特集を書いてきたが、ここで少し方向を転換、K-POP界に到来した新たな音楽ジャンルを紹介したいと思う。
それがすなわち”Moombahton Trap(ムーンバートントラップ)”である。この言葉に聞き覚えのある方も、そうでない方もいると思うが、そもそも「ムーンバートントラップ」の定義とは、
ムーンバートン(Moombahton)は、エレクトロニック・ダンス・ミュージックの一種である。 主にチョップド・アンド・スクリュードの手法を使用している。(Wikipediaより)
ということなのだが、これだけでは何のことを言っているのかわからないと思うので、実際に、有名どころの洋楽から例をいくつか挙げてみたい。
そもそもムーンバートンとはEDMの派生ジャンルの1つ。【四つ打ちビート】【ドロップ】【華やかなエレクトロサウンド】が特徴的だったEDMに対して、ムーンバートントラップの特徴は《独特のシンコペーション》と《比較的スローなテンポ》。前者のBPMが平均128なのに対して、後者は108〜110。同じエレクトロニックでも、その様相はかなり異なる。
このムーンバートン、数年前からじわじわと勢いを強め、世界的なブームが到来したのは昨年2016年。上に挙げたようなDJのミックスやクラブソングに留まらず、最近では洋楽ポップスでも人気の音楽形態だ。例えば、昨年世界中で爆発的にヒットしたDrakeのOne Dance、リリース以来長らくビルボードTop100チャートで一位を独占し続けているEd SheeranのShape Of You、なんかがムーンバートンの応用にあたる。ここからもこのムーンバートントラップがいかに裾野を広げているかがわかるだろう。
さて、前置きはこのくらいにして、ここで漸く本題のK-POP界におけるムーンバートンソングの紹介に入ろうと思う。
1. Blood Sweat & Tears / BTS
記念すべき一曲目はBTSの「血、汗、涙」(いつ見ても強烈なタイトル笑)
恐らくK-POP界におけるムーンバートンブームの先駆け、或いは新しいジャンルの草分け的存在となったのがこの一曲であろう。シンコペーションのよく利いたトラップサウンドといかにも防弾少年団らしいメロディアスな旋律の融合が見事だ。彼らのキレッキレで激しいダンスにもぴったりなのではないだろうか。
2. Me Like Yuh / Jay Park feat.Hoodie
韓国版ジャスティンビーバー(筆者が勝手にそう呼んでいるだけ)ことパク・ジェボムの最新曲もムーンバートン。サウンド然り、(貼ったリンクはコレオメインだが)ミュージックビデオ然り、どう考えてもドレイクを意識しているであろうウエスタンライクなダンスチューン。彼特有のウエスタンでファンキーなスタイルにムーンバートンはまさにもってこい。これは英語版も同時にリリースされているし、洋楽の括りに入れてしまっても差し支えないのではないだろうか。
3. Whistle / Blackpink
yg期待の新人ガールズグループのデビュー曲は少しエッジの利いたムーンバートン。彼女たちのパンクでエキゾチックな雰囲気にぴったりの一曲だ。無機質なラップと情感豊かなボーカルのコントラストが絶妙。
4. Playing With Fire / Blackpink
Blackpinkは続いてのリリースもムーンバートンで攻める。前曲に比べるとやや王道より。今は亡き2NE1の系譜を継ぐに相応しい、洋楽アーティストも顔負けの一曲だ。本題からは逸れるが、音楽放送時の衣装がいつも可愛い。
5. Meow Meow / CLC
デビュー以降の可愛いガーリーコンセプトから、韓国のセックスシンボルことキム・ヒョナ大先輩のご指導の下で、ゴリゴリのガールクラッシュコンセプトへと華麗な転身を遂げたCLCのアルバム収録曲。曲自体の知名度こそ低いものの、王道ムーンバートントラップをベースにした良曲。(どうやら巷では一つ前に紹介したBlackpinkの火遊びと似ていると言われているよう…)
6. Oh NaNa / K.A.R.D
DSP発の男女混合グループのプレデビューデジタルシングルもムーンバートン。「アイドル」ではなく飽くまでも「アーティスト」路線なのが最近のK-POP界にはどこか目新しくて新鮮。古参ケーポッパー(自称)としては、baby karaとしてkara projectで艱難辛苦を共にしてきたソミンと元KARAヨンジがこうしてまた一緒に活動しているのを見ると非常に感慨深いものがある。
7. Don't Recall / K.A.R.D
前曲に続き、K.A.R.Dのセカンドシングルもまたムーンバートン。ミュージックビデオや衣装など、一貫してシックなイメージの強い彼らにぴったりのこれまたシックな一曲。
8. Fire Truck / NCT127
一風変わったハードなムーンバートン。正直に言って私はまだNCTというグループの根本的な仕組みを理解しきっていないので果たしてこれをデビュー曲と言って良いのかは微妙なところだが、いかにもSMボーイズらしい個性の強い一曲だ。Cメロから終盤にかけて、DJ SNAKEのLight It Upを彷彿とさせるトランペットのサウンドが入るのが特徴的。
9. Never Ever / GOT7
リリースほやほやgot7の最新曲もムーンバートン。前回のEDMソングに引き続き、洋楽調の流行りに乗る形となったが、「洋楽風」であってもどこかに常に「got7らしさ」「JYPらしさ」が垣間見えるのが彼らの良さと言えるだろう。
EDMに関しても言えることだが、何せエレクトロニックミュージックは、四つ打ちなら四つ打ち、シンコペーションならシンコペーション、と、どの曲も同じビートを使うので「似ている」と思われるのは仕方ない、寧ろ当たり前のことなのかもしれない。それを頭ごなしに「パクリ」としてしまうのは少し安直過ぎる気もする。流行やトレンドに敏感で、最先端のものをいち早く取り入れられるのは、ある意味K-POP、そして韓流文化全体の強み。それが今日のK-POPの世界規模での大きな発展に繋がっていることも忘れてはならない。もっとも筆者自身長年K-POPファンをやっているので、数年前を思い出しては「あの頃の○○は良かったなあ」などと、俗に言う「懐古」の情に耽ることも少なくないが、それでもやはり前を向いて日々目覚ましい変容を遂げる「今のK-POP」を楽しむのも決して悪くないのではないか、と思うのだ。
追記:第二弾はこちら
K-POP meets Moombahton vol.2 - Name? Bomb, Cherry Bomb